award case01
リノベーションミュージアム冷泉荘(博多)
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リノベーションミュージアム冷泉荘(博多)
建物エバリュエーションの3つの要素
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既存建物の工法や技術、建材や設計デザイン等、高性能及び高品質なものを見出す目利き力(バリューサーチ)
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リフォーム、リノベーション、コンバージョンといった手法を用いて既存建物の価値をクリエイトするイメージ力(バリューアップ)
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補助金制度などを有効に活用する見識

受賞者:株式会社スペースデザイン/吉原住宅有限会社
福岡を拠点にビンテージビルプロデュース事業を展開。
建築当初は、木造家屋が一般的ななか、鉄筋コンクリート造の賃貸住宅は最先端な建物であ ったそうです。しかし、老朽化が進むにつれ、経年劣化による設備の傷みも酷く、住まいとして 整えることに限界を感じた同社は、一棟をクリエイター向けの集合アトリエとして再生すること を決断。2006 年にオフィスへのコンバージョンを実行しました。2006 年〜2009 年は実験期間 として、期間限定で入居者の要望に応じた解体と最低限(トイレ・水場等)の設備にて貸し出し をしました。室内はセルフリノベーションを可能とし、若手クリエイターが入居しやすい賃料設 定で貸出すというメリットに加え、貸し手も過剰な設備投資を避けることが実現しました。2009 年度に冷泉荘のポテンシャルを活かすべくミュージアムとしての本格的な再生事業を開始。入居 者がいながらにして、耐震調査〜100 年もつビルを目指した⻑期的な経営計画を立て、2010 年 に大規模改修を実施しました。耐震補強ブレース挿入などにより 1 階の壁を撤去し、柔軟性の あるレンタルスペースを確保することによりレンタブル比が向上しました。2016 年には外壁補 修工事を実施、コンクリートが欠けている箇所などはそのままに、コーティング加工のみを行い、 「経年を保存する」ことで建物が築年を重ねた歴史や工事の課程をそのままの「展示物」にみたて、ミュージアムとしてのブランディングを確立したのです。 そして、⻑期的な経営分析のもと、レンタブル比アップとブランディングの相乗効果により賃料収入の増加が図れ、本格稼働 5 年目(2013 年度)にして収支は黑字に転じることとなりまし た。リノベーションするだけでなく、コミュニティを醸成することで不動産価値が上がっていく こと(=「経年劣化」ではなく「経年優価」と呼ぶ)を実現しました。


受賞者は、冷泉荘での実践をもとに、「ビンテージビル」という独自の概念を定義しました。 それは、古いとされるものの中に価値を見出す「ビンテージ」の考え方を建物にあてはめたもの です。建物は「古い=価値がない」わけではなく、営みが失われていくことで魅力が下がってい く。人が活動し歴史やネットワーク、魅力的な人々のかかわりが蓄積され続ければ、時とともに 価値の向上が図れることと考えています。



